アイヌ語の特徴、歴史と未来
日本の少数言語のひとつとして、近年、アイヌ語が徐々に注目を集めつつある。このサイトの記事第一号として、今回はそのアイヌ語の世界を覗いてみよう。
アイヌ語は口頭伝承言語で、元来、豊かなアイヌ語の口承文学が象徴するように、文字の形をとっていなかった。記述という形で記録されるようになったのはつい最近のことで、カタカナ、ローマ字、またはキリル文字による表記が一般的である。また、アイヌ語の音声記録を最初に行った研究者としてはポーランドの学者ピウスツキが知られている。
言語学の観点では、地理的にアイヌ語圏周辺で話されてきた多くの言語と同じように、SOV型(文構造的に主語、目的語、述語の順をとる)に分類され、語幹に形態素を一つまたは複数付着させた形で単語を成す言語として知られているが、特に一単語における形態素の数が多い抱合語としてはこの地域では異彩を放っている。
アイヌ語が日本語と同じ系統に属すかについては、研究者の間で大きく議論がなされているが、地理的に文化の中心地が近いことから、お互いからの借用語は確かにいくらかみられる。
オットセイ、シシャモ、トナカイなどの単語はアイヌ語から日本語へ、というのは有名な話である。アイヌ語とアイヌ文化の研究者である中川裕によれば、atay「値」、puta「蓋」sippo「塩」はおそらく日本語からアイヌ語への借用語とみられるが、信仰や宗教に関する語彙の中で、アイヌ語と日本語で同源の語彙と思われるものは特に多い。例えば、kamuy「神」、onkami「おがむ」、tuki「杯」などである(ただし、どちらの言語が起源かという点は不明瞭であることを認識する必要があると中川は強調している)。[^1]
少数派の言語において、政治と歴史はその存続に大きく関わる。アイヌでいえば、「和人」からの数世紀にわたる植民地化の歴史に始まり、現在の人権・文化保護の観点での問題に至るまで、本州側の政治政策が民族の存亡を大きく揺るがしてきた。特に、言語というものは、日常的な会話手段としての役割や、時代や世代に沿った変化・適応能力がなければ生存できないという、ある意味生き物のような性質を持っている。つまり、この数世紀にわたる衰退の過程で、アイヌ語が家庭から消えたことは、大きな打撃であった。
国際社会で、民族の権利の尊重を促す動きが近年広まってきている中、日本政府の対応を疑問視する声もあがっている。2007年の国連の「先住民族の権利に関する国際連合宣言」の採択を受けて、日本政府もアイヌ民族を先住民と容認した一方で、自決権や先住権(土地や資源、慣習に対する権利)の保護が未だ不十分という課題もある。また、実際は日本は多民族国家なのに、さも単一民族国家であるような見方が広く受け入れられていることは、公的認知や自己肯定の過程を妨げているといえる。
アイヌ語は、UNESCOにより消滅の危機に冒されている言語に区分されている日本の少数言語のひとつである。2017年時点で認識されている母語話者は5人とされているが、2024年現在に至ってはすでに母語話者はゼロとみられている。アイヌ文化復興の取り組みが以前より注目を浴びる中で、言語と文化の保護、助長への道のりはまだ長いのが現実だ。
日本の多様性保護の観点から、まず必要なのが、言語を普及させる場を作ることであると私は考える。日本の学校では現在、日本語のほかは外国語(頻繁に英語のみ)の教育が実践されているが、地元に根付いた言語を学校で教える体制はほとんど取られていない。例えば、北海道・東北地域の歴史を語るうえで欠かせないアイヌ文化への認識を高めるためにも、教育の場を設けること、若い世代の学ぶ権利を守ることは不可欠である。
言語・文化復興の例として、アイルランドにおけるアイルランドゲール語を挙げてみよう。歴史的に北海道と似ている点が驚くほど多いアイルランドだが、もともと本島で話されていたアイルランド語の話者数は、ブリテン島からの侵攻や植民地化、さらには19世紀の大飢饉により何世紀にもわたって減少を続け、つい最近まで深刻な状況にあった。しかし、近年、積極的な振興政策のかいもあって若い世代間で再び注目を集めるようになり、年々アイルランドゲール語と英語の両方でバイリンガルの義務教育を実施する学校が増えている。まだ教育機関外でアイルランドゲール語を要する場面がほぼないなど、言語の振興の点で課題も多く残されてはいるが、言語を学ぶ場と関心の普及という点で、アイヌ語の未来へ向けて学べるものも多いといえるだろう。
すでに母語話者がいないという点を考えれば、アイヌ語が違った道をたどることは確かだ。それでも、アイヌ語もアイルランドゲール語と同様に、若い世代で関心が高まってきていることで復興しつつある。あとは、その復興をどう維持、発展させるかだ。
[1]:
^ Nakagawa, Hiroshi. (2003.12.26). 日本語とアイヌ語の史的関係, 日本語系統論の現在Perspectives on the Origins of the Japanese Language, 巻31, 210-211, https://nichibun.repo.nii.ac.jp/records/5285 (2024.04.19)
知識を深めよう!・ Further reading
Bugaeva, Anna. (2022). Handbook of the Ainu Language. De Gruyter Mouton. Volume 12
Tamura, Suzuko. (2000). The Ainu Language. Sanseido. ICHEL Linguistic Studies Vol.2
Az ainu nyelv Észak-Japánban és a környező régiókban gyökerező nyelv, amelyet viszonylag nemrégiben kezdtek el lejegyezni, általában katakánával, latin betűkkel vagy cirill betűkkel. Nyelvileg SOV szerkezetű, és bár vita folyik az ainu és a japán kapcsolatáról, sok kölcsönszó van egymástól. Az ainu nyelv kisebbségi nyelv, fennmaradását nagyban befolyásolja a politika és a történelem. Miközben az etnikai jogok egyre nagyobb témává válnak nemzetközi szinten, kritikák érik a japán kormány elhanyagolását ebben a témában. Az ainu nyelv a kihalás szélén áll, nincs anyanyelvi beszélője – a kérdés az, hogyan lehet megakadályozni, hogy a nyelv és az ainu gazdag kultúrája kihaljon.
Die Sprache von Ainu ist eine Sprache, die in Nord-Japan und den umliegenden Regionen verwurzelt ist und erst vor relativ kurzer Zeit niedergeschrieben wurde, wobei üblicherweise Katakana oder lateinische oder kyrillische Buchstaben verwendet werden. Sprachlich gesehen hat es die SOV-Struktur, und obwohl es Debatten über die Beziehung zwischen Ainu und Japanisch gibt, gibt es viele Lehnwörter voneinander. Die Ainu-Sprache ist eine Minderheitensprache und ihr Überleben wird stark von Politik und Geschichte beeinflusst. Während ethnische Rechte auf internationaler Ebene zunehmend zu einem wichtigen Thema werden, wird die Haltung der japanischen Regierung auf die Rechte des Ainus als nachlässig kritisiert. Die Sprache von Ainu ist vom Aussterben bedroht, da es keine Muttersprachler mehr gibt – die Frage ist, wie man das Aussterben der Sprache und der reichen Kultur des Ainus verhindern kann.
The Ainu language is traditionally a non-written language that is rooted in northern Japan and its surrounding regions. It started to be written down relatively recently, commonly using Katakana, Latin or Cyrillic alphabet. Linguistically, it has the SOV structure, and although there is much debate about the relationship between Ainu and Japanese, there are many loanwords from each other. The Ainu language is a minority language, and its survival is greatly influenced by politics and history. While ethnic rights are increasingly becoming a major topic on an international scale, the Japanese government's atittude toward it has been criticised as being neglectful. The Ainu language is on the verge of extinction, with no native speakers left - the question is, how to stop the Ainu's rich culture and its language from going extinct.